「リベラル・グローバリズムこそ反キリスト」 ピーター・ティールが敵を名指しした。
ピーター・ティールは『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューにおいて、現代世界の本質的なジレンマを的確に言い当てた。それはすなわち、「反キリスト」対「ハルマゲドン」という構図である。ここで言う「反キリスト」とは、リベラルなグローバリズム、すなわち世界国家構想、「ひとつの世界か、さもなくば何もなし(One World or none)」という理念を指しており、対する「ハルマゲドン」とは、多極世界、多大国の力による均衡に基づく世界秩序を意味している。MAGA運動、プーチン、そして中国やバーラト(インド)がこの陣営に属する。
ではなぜ、多極化が第三次世界大戦(すなわちハルマゲドン)を引き起こすとされるのか。ティールはその理由を問いかける。それは、反キリストの陣営が意図的にこの「ハルマゲドン」の語を用い、主権の保持という正統な国家理論の主張を、相互破滅をもたらす危険思想として描き出しているからである。MAGAに加え、プーチン、習近平、モディらが前提としているのは、多極化が現実的な共存体制を可能にするという見通しである。これは「大国間秩序(Greater Power Order, GPO)」の理念である。
ティールは、ここに一つの示唆を与える。すなわち、多極化をハルマゲドンとして描き出し、実際にそれを誘発しようとしているのは、まさに「反キリスト」自身なのだという主張である。ネオコン派、たとえばリンジー・グラハムらはまさにこの役割を果たしており、MAGAを乗っ取って攻撃的な覇権主義へと変質させている。
今回、国際的に高位の議論において初めて、「反キリスト」という語が、リベラル・グローバリズムに対して本来的な意味で使用された。しかし、「ハルマゲドン陣営」という呼称は不正確であり、それはむしろ反キリスト陣営、すなわちグローバリストたちが意図的に作り上げた虚偽のレッテルである。ティールは、この構造を明確に指摘している。
ティールのインタビューにおける第二の論点は、「右派によるトランスヒューマニズム(transhumanism)」である。それは極めて不吉な徴候を孕んでいる。彼は、人間の魂が身体から解放されうるという可能性に言及する。左派はそもそも「魂など存在しない」として否定する一方、カトリックの信仰を持つ(同性愛者である)ティールは、魂の存在を肯定している。しかし、その次の論理的跳躍は奇妙である。もし魂が本質的なものだとすれば、身体は「選択的存在」であっても構わないというのである。
ティールによれば、身体を持たない人間、あるいは身体が任意であるような存在も、なお人間でありうる。そして性別変更という現象は、魂の発見への第一歩であるとされる。これはまさに「奇妙な神学」である。
ティールの全体的主張をまとめれば、以下のようになる。グローバリズム、そしてそれに連なる左派リベラリズム(たとえばジョージ・ソロスやグレタ・トゥーンベリ)は、「反キリスト」である。魂は存在する。これについては正しい。しかし、「身体は選択可能であり、技術が魂の解放をもたらす」という点については誤っている。
一方、イーロン・マスクは勢いを増しており、トランプは中東における軍事介入や、ベンヤミン・ネタニヤフに対する無条件の支持によって、ネオコンの手に落ち、MAGAの支持層から強く不信を買っている。MAGAの民衆は、裏切られたと感じているのである。いまこそ、「新たな運動」を始めるべき時が到来している。
翻訳:林田一博