アレクサンドル・ドゥーギンによる分析 「プーチンはウクライナ全体を欲している」 というトランプ声明の詳細
トランプの「プーチンは火遊びをしている」という発言は、確かに相当不快なものです。しかし、問題の本質は、アメリカの指導者が我が国の大統領の行動や計画に対して警戒心を抱いたことにあるのではありません。むしろ、トランプがウクライナ問題に本格的に取り組み始めたことで、その背後にある別の側面が彼の視野に入るようになった、という点にあります。
その一方で、私たちが引用しなかったトランプの投稿の中には、見過ごせない重要な言葉が含まれていました。
「プーチンはウクライナ全体を欲している」
この言葉の真意を正しく理解するには、彼が「ウクライナ全土をナチス体制から解放したい」と望んでいるという事実に目を向ける必要があります。まさにその意味で、プーチンはウクライナ全体を求めているのであり、それは違法に政権を掌握したネオナチ的、テロリスト的、過激主義的集団の痕跡を完全に消し去り、再興の余地も与えないという徹底的な意志に基づくものです。なぜなら、ウクライナは我々の統一された文化的・地政学的・政治的空間の一部であり、この問題はロシアの内政問題とも言えるからです。
私は、トランプが戦争の終結を心から望んでいることに疑いを持ちません。そこに狡猾さや欺瞞は見られず、誠実さがあると見ています。しかし、彼はこの戦争の本質をまだ十分に理解していません。当初は「バイデンの戦争」と呼んでいた彼も、今では「バイデン、ゼレンスキー、プーチンの戦争」と言い換えています。最も重要なのは、彼がこの戦争を「自分のものではない」と認識していることです。
とはいえ、彼もまたこの戦争に巻き込まれており、多くのグローバリスト勢力やネオコンが、彼にとって不利益でしかないこの「他人の戦争」への関与を執拗に押し付けています。
そのため、彼はこの戦争を終わらせたいと切望しつつも、その方法を見出せずにいます。そしてプロパガンダを越えて、誰が誰と戦い、なぜ戦っているのかを探ろうとしたとき、トランプは西側諸国が提供する表層的な説明とはまったく異なる、真に複雑な現実に直面することになります。彼は、我々ロシア人にとって越えることのできない「レッドライン」が実在し、ウクライナはナチス体制から解放され、根本から生まれ変わる必要があること、そしてその実現なくしては戦争の終結もあり得ないという事実を理解するのです。
とはいえトランプは、できる限り早期の戦争終結を望んでおり、四方からの強い圧力にさらされています。その圧力の源には、彼を忌み嫌う人物──たとえばマクロンやスターマー、カナダの新首相カーニー(トルドーと同じくリベラル派)、メルツ、そしてアメリカ民主党やグローバリスト勢力、いわゆる「ディープステート」──が含まれています。彼らはトランプが戦争に加わり、ロシアとの対立を激化させることを望み、プーチンとトランプという二人の「敵」を同時に弱体化させることを企図しています。
もちろん、トランプがこれを理解していないはずはありません。ただし、彼はいま、槌と金床の間に挟まれたような状態にあり、戦争を止めたいと考えながらも、まだ我々の条件を受け入れる準備が整っておらず、それは彼が今なお「成熟の過程にある」ためです。加えて、関税政策や内政、ソロス系の司法網による政策妨害など、複数の難題に晒されている彼は、どの方面でも決定的な成果を出せず、その苛立ちをロシアに向けているのかもしれません。
その結果、我が国の指導部は、トランプによるロシアへの不快かつ非外交的な発言について特段の対応を取ることなく、これを単なる神経的な反応とみなしました。実際、それは明らかに神経的な崩壊とも取れるものでしたが、同時に彼は我々がウクライナ全土を必要としているという点を正確に理解しており、それを認めながらも、引き渡す用意がないという矛盾した立場にあるのです。
この点こそが、問題の核心です。
とはいえ、時間は多くのものを癒やすでしょう。現在準備されているトランプとプーチンの首脳会談によって、多くの対立が緩和されることを私は期待しています。その対話の中で、ウクライナ問題は中心的な議題から外れ、より周縁的な位置づけへと移行するかもしれません。なぜなら、我々の間にはさらに重大かつ共通する課題があり、それらは新たな多極世界の中で影響圏をいかに分割するかという問いと直結しているからです。ロシア、アメリカ、中国という三つの文明国家が、この点について語り合う必要があると私は考えます。ウクライナは、そうした高次元の対話の中核を占めるべき問題ではありません。
したがって、我が国の大統領が見せているように、トランプの粗野な言葉に対して冷静かつ理性的に対処することが重要です。そのような表現に過剰に反応して騒ぎを大きくするべきではありません。我々は、自らの価値を知る偉大な国家であり、他国もいずれその価値を認めることになるでしょう。
今、我々がなすべきは、この夏において説得力のある軍事行動を展開し、可能な限り多くの本来のロシア領を解放しつつ、敵の侵入を食い止める準備を整えることです。これを達成すれば、トランプの対ロシア姿勢にも変化が現れることでしょう。我々には、堂々たる、強力で成功した軍事的勝利が必要であり、それによって初めて真の対話が始まるのです。
なお、トランプの脅しについて言えば、我々はすでに同様の発言を何度となく耳にしてきました。バイデンからも、EUからも同じような警告がありました。要するに、ロシアがアメリカから核攻撃を受ける可能性をほのめかしているのです。しかし同様に、アメリカもロシアからの核攻撃に直面する可能性があります。これは建設的とは言えない悪質な対話であり、私はこの種の脅迫が続くことを望みません。こうした議論は本質的に不誠実であり、真の交渉にはなり得ないからです。トランプは、ディープステートの操り人形としてバイデンが推し進めてきたグローバリスト的路線を単純に踏襲するような人物ではありません。
この話題はここで打ち切るべきであり、反応を見せる必要もないのです。
とはいえ、仮にエスカレーションが本気で望まれているのであれば、我々はそのあらゆる事態に備えており、それもまた選択肢の一つにすぎません。けれども、それは静かに実行すべきことなのです。
翻訳:林田一博