「孤独のエルドアン」
イスタンブール市長のエクレム・イマモウルが逮捕されたことをきっかけとして、トルコ国内では深刻な騒乱が勃発し、事態は日に日にエスカレートしています。この危機を正確に分析するためには、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。
まず最初に挙げられるのは、イスタンブールの市長がアンカラ市長と同様に、エルドアン大統領に対抗するリベラル派に所属しているという点です。彼らが所属する共和人民党(CHP)は、エルドアン自身が率いるAK党(公正発展党)に対抗しており、左派リベラルかつ世俗的な思想を持ち、全体的に親欧州的な政策を掲げています。このため共和人民党は原則として西側諸国と親和性が高く、エルドアン政権が進めてきたイスラム志向の政策に強く反対する姿勢をとっています。また同党はロシアに対して、比較的敵対的な立場を取る傾向があります。
次にエルドアン自身が最近になって、重大な政治的過ちを犯しているという点も重要です。その中で最も深刻な失敗は、アル・ジュラニ率いる過激派によるシリアのダマスカス政権奪取を支援したことです。この判断は致命的とも言える誤りで、トルコとロシアそしてトルコとイランの関係に深刻な打撃を与えました。この影響は非常に大きく、もはや修復不可能に近い状態となりつつあり、ロシアもイランもエルドアンを支援することはまず期待できない状況になっています。この結果、状況はすでにエルドアンにとって極めて不利に傾いており、今後さらに危機が激化する可能性も否定できないものになっています。
今回のトルコでの騒乱に対して、イランやロシアが関与することは到底考えにくい状況です。それよりも高い可能性として、西側諸国がエルドアンを失脚させようとしているという見方です。しかしながら、やはりエルドアンが犯したシリア政策の誤りは致命的でした。トルコ国内の多くの人々はこの決定を理解することができなかったばかりか、それを強く非難しています。結果としてアラウィー派をはじめとする少数派民族や宗教的少数派(キリスト教徒を含む)に対する深刻な迫害や虐殺が起きることになり、こうした現実を招くようなシリアにおける権力をアルカイダ系勢力へと引き渡す行為は、きわめて視野の狭い政治家のみが取る道だったと言えます。エルドアンはこれまで一般的に先見の明がある政治家として評価されてきましたが、この決定は今後幾度となく彼の足を引っ張ることになるはずです。
また別の側面として、エルドアン政権による経済政策の失敗も深刻化しています。リラの急激な切り下げと抑えの利かないインフレは、ただでさえ脆弱なトルコ経済の基盤を根本的に揺るがしています。そしてこれらの政策の失敗と、シリアでの致命的な過ちとも絡み合い、EUやグローバリスト勢力へのエルドアンの歩み寄り、さらにはイギリス情報機関MI6のトップであるリチャード・ムーアとの接触などを経て、まるで巧妙に仕掛けられた罠のような構造が、エルドアンを追い込んでいます。
こうした状況を見逃さず、トルコ国内ではリベラル的でありながらもケマル主義を継承するナショナリスト勢力を含む野党勢力が、ここぞとばかりにエルドアンの失策を利用して政治的に優位に立とうとしています。彼らの主張は非常に明快で、「我々は以前からシリアでの軍事介入がピュロスの勝利(損失が大きすぎる勝利)になると警告してきたが、その通りになった。今やトルコ経済は崩壊寸前の状況である。さらにエルドアン政権の下では、トルコが欧州に迎え入れられる可能性はほとんどない。我々こそが西側諸国との関係を回復し、トルコを経済的・政治的に安定させることができる唯一の勢力である」とするもので、エルドアン政権の失策を最大限に活用して、国民の支持を自らに引き寄せています。
トルコは民主主義が機能している国家であるため、エルドアン大統領であっても、イスタンブールやアンカラの市民が野党の候補者を市長選で選ぶのを阻止することはできませんでした。結局のところエルドアンは、イスタンブール市長を投獄するという手段に出たのですが、その行動が正当であるかどうかはもはや問題ではなくなっています。なぜならば現代の政治制度では、どんな役人であっても投獄の口実を見つけることは容易であり、いわば無実の政治家など存在しないからです。トルコもまたこの点で例外とは言えません。したがってこの問題は純粋に、政治的な損得の問題でしかないのです。
エルドアンは自らを取り巻く状況が悪化していると感じ、最も強力な政敵であるイマモウルを排除しなければならないと決断したのですが、実はこのイマモウルという人物は、ジョージ・ソロスと深いつながりを持ち、グローバリストの国際的ネットワークに支援されている人物でした。このためエルドアン自身が以前からソロス派勢力に対して強硬な姿勢を取っていたならば、彼の今回の行動も理解され、支持を集めることができたかもしれません。
しかしながら、すでに述べたように、エルドアンは自分の同盟国であるロシアやイランを背後から裏切るような行為を行ったため、いまさらロシアやイランが彼を支援するという選択肢は存在していません。
そのため現状において彼を擁護する理由がなくなってしまったのです。
これはエルドアンにとって極めて厳しい状況をもたらしており、これまでに重ねられた数々の失策を好機と見た敵対勢力が一斉に反乱を起こしました。
まさにこれは典型的なカラー革命の様相を帯びています。
しかもかつてエルドアン自身が「エルジェネコン事件」という捏造された陰謀事件で弾圧し、それでも2016年のクーデター未遂の際には彼を救った、軍や保守派にも近いユーラシア主義的ケマル主義者たちですら、もはや彼を助けようとはしません。
なぜならば彼らもまた、エルドアンに何度も裏切られてきたからです。
要するにエルドアンは周囲のすべての者を繰り返し裏切った結果、とうとう味方を一人も失ってしまったということです。そのため彼が現在直面している状況は極めて苦しいものと言えます。しかしながらこの騒乱を観察する私たち自身も注意深くある必要があります。というのもこの騒乱の背後には、セルビアを含め各国のカラー革命を仕掛けてきた勢力が潜んでいるからです。もちろん現在デモに参加しているグローバリスト系の活動家はごく少数派に過ぎず、大多数は政治指導層の失政や暴走に対して正当な怒りを抱えている普通の市民です。そのため今回の騒乱には十分な理由があり、いわばエルドアンが許される失敗の限界を超えてしまったというのが実情に近いのかもしれません。それにもかかわらず、彼はさらなる誤った判断を繰り返し続けているようです。
この状況を修正できる方法があるのか、現時点では明確に述べるのは難しいところですが、あるいはケマル主義者を中心とする国民統一政府が樹立され、そこにはエルドアンの党に属する穏健派イスラム主義者たちも加わる可能性が考えられます。このような混乱の中、エルドアン政権を支える最大の盟友であったトルコ民族主義運動党の指導者、デヴレト・バフチェリの動向が注目されています。現在、彼がすでに死亡しており、それを政府が隠蔽しているという噂まで流れていますが、もちろんこれは陰謀論的な話に過ぎないでしょう。しかし実際に彼の健康状態が悪化し、高齢化によって影響力を失っていることは確かで、もはやエルドアンは彼や、かつて強力な影響力を持った過激な民族主義団体「グレイ・ウルフ」に頼ることは難しくなってしまったのです。
繰り返しますが、エルドアン政権と彼自身の将来は非常に暗い見通しになっています。それでももちろん、私たちとしては、独立した外交政策を維持し続ける主権国家としてのトルコが隣国として存続することを望んでいます。
できれば友好的であることが望ましいのですが、仮にトルコが敵対的になったとしても、ロシアはあらゆる事態に備えているのです。
翻訳:林田一博