「米国の対中南米政策における新たな潮流」

09.04.2025

モンロー・ドクトリン以来二世紀以上にわたり、アメリカはラテンアメリカを自国の「裏庭」と見なしてさまざまな口実のもとで、域内諸国に介入し軍事行動を行ってきました。ワシントンに従属する傀儡政権の存在から、プエルトリコのような新植民地主義的構造体「自由連合地域」に至るまで、その影響は今日でもなお色濃く残っています。

ドナルド・トランプ政権はすでにラテンアメリカ諸国に対して、多数の威嚇や高圧的な発言を行っているため、今後アメリカが実際にどのような手段を講じる可能性があるのか、そしてどの国々が厳しい対応の対象となるのかを分析する必要があります。ただし予防外交という名目を掲げながら、トランプが一部はったりを用いる可能性も念頭に置くべきです。

最初にホワイトハウスの圧力にさらされたのは、メキシコとパナマでした。メキシコに対しては「言語帝国主義」とも呼ばれるトランプの政令 - メキシコ湾を「アメリカ湾」と改称するというもの - に加えて、不法移民の越境や麻薬カルテルの活動が続く場合には、軍事力を行使するという警告が発せられました。これを受けて米軍特殊部隊数千人が南部国境に追加配備され、メキシコはアメリカ側の提案を受け入れざるを得なくなり、2024年2月以降メキシコ軍の組織犯罪対策を支援するため、特殊部隊を正式に受け入れました。3月18日にはアメリカのミサイル搭載艦が、メキシコ湾の海域に進入しています。

パナマもまた運河の併合の可能性に対する、政府の強い反発にもかかわらず、中国の影響力縮小というアメリカの要求に応じ、香港系企業C.K.ハチソンが保有する港湾資産(パナマ及びヨーロッパの複数港)を、アメリカのブラックロック・コンソーシアムが取得する交渉を開始しました。

その他の中南米諸国は次の三つの類型に分類されます。

第一はアメリカの覇権を公然と批判・拒絶する国々。

第二は中立的立場で均衡を維持する国々。

第三は現在アメリカと積極的に協力し、見返りを受けている国々。

例えばエルサルバドルではナイブ・ブケレ大統領の下、アメリカからの囚人を有償で受け入れる取り決めが行われており(公式には、これはベネズエラのギャング「トレン・デ・アラグア(TdA)」の構成員とされています)、さらに同国は国内ギャングMS-13のリーダー引き渡しをアメリカに要請しています。

第一のグループにはロシアと戦略的パートナー関係にあるALBA諸国、すなわちキューバ、ニカラグア、ベネズエラ、ボリビアが含まれます。キューバとニカラグアについてはアメリカが、今後も制裁路線を継続する可能性が高いと見られています。同時にホワイトハウスはキューバとの医療分野での協力に、新たな制約を加えると警告しました。医療分野は従来人道的理由から、制裁の対象外とされてきただけに、この発言は多くのラテンアメリカ諸国に衝撃と反発を引き起こしました。

ベネズエラはさらに特異な事例です。というのも経済制裁に加え、武力行使の現実的な脅威すら存在しているからです。アメリカの石油企業 - とりわけシェブロン - がトランプによって撤退を命じられたことで、同国経済は一層の打撃を受けることになります。また、ベネズエラ国籍者に対するアメリカの新たな入国規制も、両国間の関係をさらに悪化させると予想されます。ただし、こうした状況は必ずしも軍事介入の直接的根拠とはなりません。

ガイアナ協同共和国との領土紛争は、2023年の国民投票によればその領土の3分の1がベネズエラに属しているとされており、アメリカの新たな軍事介入の口実となる可能性があります。アメリカ南方軍の幹部はすでにガイアナへの軍事支援について言及しており、同国におけるエクソンモービルの直接的な利害関係を踏まえると、多層的なロビー活動が展開されることも考えられます。以前米国民主主義基金のメンバーであるフアン・サラテはベネズエラの不安定化を推進しており、現国務長官マルコ・ルビオとも関係があります。ガイアナの一部が事実上のグレーゾーンと化している現状において、あらゆる挑発行為が可能な状況です。

コロンビアにはすでにアメリカ軍基地が存在し、過去には隣国ベネズエラへの破壊工作の拠点として使用されてきました。しかし、グスタボ・ペトロ大統領の下でマドゥロ政権との関係は正常化され、コロンビアは米国に対し軍用機の空域使用を拒否しました。また、トランプ政権はコロンビア製品に一律25%の関税を課しています。国内ではパラミリタリー集団の活動により不安定な地域もあり、米国には麻薬密売対策を名目とする介入の正当化が可能ですが、現時点では明確な軍事行動の兆候は見られていません。

エクアドルは依然としてアメリカと足並みを揃えていますが、4月13日に予定されている大統領選挙では、バナナ産業の実業家ダニエル・ノボアが勝利を目指しています。第1回投票ではノボアが首都キトを含む山岳地帯で優位に立ち、ルイサ・ゴンザレスは治安問題の深刻な沿岸部で勝利しました。票はおおむね拮抗しており、第2回投票では第3位のレオニダス・イザの支持層を巡る争奪戦が予想されます。

ペルーでは昨年チャンカイ深海港が開港し、中国からの投資と結びついたこのインフラにより、ワシントンはペルーを対立陣営の一部と見なしています。南アジアと南米をつなぐこの新たな海上通路は、アメリカによる通信支配体制を脅かす存在とされています。

ペルーではディナ・ボルアルテ政権が、3月18日からリマとカヤオに30日間の非常事態を宣言し、軍と警察による合同パトロールが開始されました。この措置は、クンビャンベラ楽団のバスが独立通りを走行中に数名から銃撃を受け、アルモニア10の歌手ポール・フローレスが殺害された事件を受けてのものです。

これはあくまでも国内の治安問題ではありますが、歴史が示すようにアメリカはこの種の事件を口実に、自国の介入を正当化してきた過去があります。

ボリビアはアメリカとの関係が冷え込んでいますが、国内にリチウムや天然ガスを含む豊富な資源を有することから、再びワシントンの関心を集める可能性があります。今年には選挙が予定されており、アメリカ国務省が選挙プロセスに介入しようとする試みも予想されます。ただし、ボリビアに対して公然と軍事介入を行うには、周辺国の領土を通過する必要があるため、技術的な制約が大きいと考えられます。

チリについてはガブリエル・ボリッチ大統領が、最近ゼレンスキーを「選挙も経ずに権力を握る独裁者」と呼んだトランプの発言に対して、「受け入れがたい」と反発し、キエフ政権を擁護しました。ボリッチがこれまでワシントンの方針に追随してきたことを考えると、一見奇妙にも思えます。しかし、ジョージ・ソロスやロスチャイルド家などが率いるリベラル・グローバリズム勢力と、ドナルド・トランプに代表される保守派との対立という文脈に置いてみれば、彼の行動の意味が明らかになります。ボリッチは明らかにソロスの意向に従っており、リベラル・グローバリストのプロジェクトにおける駒と位置づけられます。

ちなみに2022年から2025年までチリの内相を務めたカロリナ・トハも、同様にグローバリストの利害を代弁する立場にあり、ソロス系の構造やブラックロック社との関連も指摘されています。彼女は今年11月の大統領選に出馬するためにすでに辞任しています。

このような背景を踏まえると、トランプが現在のチリ政府に対して不信や疑念を抱く可能性は否定できません。

ブラジルの指導層も、決して盤石とは言えない状況にあります。同国はグローバル・サウスにおける指導的立場を事実上インドに譲っており、ルーラ・ダ・シルバ大統領の近年の政策には一貫性が見られません。たとえば、最近ではベネズエラのBRICS加盟を阻止する動きも見られました。また、前大統領のジャイル・ボルソナロは、先週末にリオデジャネイロで約50万人規模の集会を開き、事実上の選挙運動を開始しました。ボルソナロは保守派として知られ、ドナルド・トランプとも親交があり、今後トランプからの政治的支援を受けることは確実です。ただし、ルーラ政権も安全保障や防衛分野を含むさまざまな領域でアメリカと協力関係を維持しており、情勢はただちに危機的というわけではありません。

アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、親米かつ親トランプ的な姿勢を取っており、今後もワシントンにとって有利な政策を継続していくと見られます。

アメリカの外交政策が転換期にある今、その評価基準もまた変化しつつあります。20世紀初頭には、アメリカの中南米における影響力はユナイテッド・フルーツ・カンパニーのような経済的利益を軸に評価されていましたが、20世紀後半になると共産主義の拡大やキューバ革命(1959年)後の代替的政治体制の出現に対する懸念が主導的要因となり、コンドル作戦のようなイデオロギー重視の介入が行われるようになりました。現在、このような思想的な枠組みは後退しており、トランプは経済的利益をより重視しているようです。これはむしろ20世紀初頭の戦略に近く、今後の政策においては、まず中国の存在と、メキシコ国境からの直接的な脅威が考慮されることになると推測しています。

翻訳:林田一博